上司との揉め事もあったから、退院してすぐに会社に出るのは気が重すぎる。
もうしばらく休みたいから、また病気になるのは丁度よい。
そうだ。少し演技したらいいんだ。
夫が心配して硬い表情をしている。
『これは演技だからね。もう少し会社休みたいから協力して』
と私は心の中で言いました。
頭の中の会話で、夫にはちゃんと通じていると考えていました。
母が来て夫が事情を説明したので、母は泣きそうな顔になっていました。
身内にも狂ったフリを信じてもらわないといけないので
夫も演技していると思っていました。
夫が演技してるという状況がおかしくて楽しくて、私は笑っていました。
この演劇ごっこに対して、夫も心の中では笑いそうになるのを
懸命にこらえてると思っていました。
ネットで病院を探すと言って2階へ行った夫は、母からは見えなくなった所で
今頃ころげ回って笑い声をこらえていると思っていました。
そして不意に・・・誰かが来るかも知れないと思いました。
誰だろう。私が『聖母』なら、来るのは『三賢者』ということ?
真っ先に思い浮かんだのは、学生の頃からの友人のUさん。
次は、クマおじさん。・・・あと一人は誰だろう?
そして、私の頭の中でこの二人との会話が始まりました。
Uさん:「この度は、大変でしたね」
クマさん:「お見舞いに来ました」
私:「そーなの。本当にびっくりしたよー。こんな事って起こると思う?」
( 私は聖母的な経験をしたし、二人も理解していると思っている )
クマさん:「なんか、あれだね。聖母っていうか、肥大化した綾波レイ的な?」
私:「あーっはっはっはっ (爆笑) 違うでしょ。やめてよー、もう! (笑) 」
Uさん:「それじゃあ、ナウシカって感じ?」
私:「いやーっ、それも違うでしょーっ (笑) 」
クマさん:「聖母的ヒロインなら、まぁ何でもいいのかなと」
家族と精神病院の待合室にいる時にも、この二人との通信が続いていました。
私:「今病院なんだけど、まだ演技しなくちゃいけなくて・・・」
Uさん:「大丈夫、あなたならできる!ガラスの仮面 ※ を思い出して!
北島マヤになるのよ!」
私:「やめてよーっ。無理、無理ーっ! (爆笑) 」
クマさん:「姫川亜弓の方が、良かった? (笑) 」
私:「いやもう、絶対無理だから (笑) 」
私:「心配してお母さんが泣いてるーっ!もう止めたい」
Uさん:「さっきパコさんが言ったじゃん。お母さんは強い人だから大丈夫って」
クマさん:「後でお母さんもこの仲間になる人だよね。
打ち明けるまで、もう少しだから我慢して」
Uさん:「旦那さんも、しっかり演技してるでしょ」
私:「・・・うん。わかった。大丈夫、そうする」
私:「あっ、そういえば三人目の人って来るの?」
Uさん:「そうそう。今、新幹線に乗って向かってるって」
私:「ん?・・・えっ!? あの人なの? ほんとに?」
私の中でP氏が三人目の賢者でした。P氏とはもう18年会っていません。
私:「そっか。P氏、来るんだ」
3人をそれぞれに、どう紹介したらいいのかなぁ?
あぁそうか、テレパシーで繋がっているから説明しなくても
だいだいの事は解るんだったよね ♪
・・・現実の私は、ずっと笑っていました。
私の記憶は全く無いのですが・・・
病院のトイレの床で寝っ転がって笑っていた私
を夫が見つけたのは、この妄想の最中だったと思われます。